図書室からー本の紹介ー
投稿日: 2025年7月15日

図書室から~本の紹介~
『命をつないだ路面電車』
テア・ランノ 著 関口 英子・山下 愛純 訳 小学館
これは、第二次世界大戦中のイタリアで起こった、ナチス・ドイツによるユダヤ人強制連行の最中、実際にあった出来事を元に描かれた作品です。12歳の少年エマヌエーレは、イタリアのゲットー地区(ユダヤ人居住区域)で貧しいながらも、温かな家族と一緒に暮らしていました。
しかし、1943年10月16日の早朝、エマヌエーレは母親と一緒にナチスに連行されてしまうのです。母親は、連行されるトラックから、エマヌエーレを突き落とします。「逃げなさい!」その叫びを背後に、エマヌエーレは母を助けたい気持ちを抑え、その場を離れます。彼が、命からがら乗り込んだのは、大勢の人が行きかう路面電車でした。
この物語には、戦争が引き起こす人間の非情さ、無慈悲な行いが描かれていると同時に、人間の情、慈悲の心によって救われた命があるということが描かれています。誰かの少しの思いやりで、今日まで生きることができた人が存在するのです。
時代や世論に流されず、物事の真髄を捉え、行動するということが、どれだけ難しく、また大切なことであるかということを、この物語が教えてくれます。